カルテと聴診器

プールの病気

プールに関する疾病とその予防
安全なプール
プールで起こりやすい主な病気や障害を、いくつかご紹介します。少しでも思い当たる症状がある時は入水を控えるなど、予防に努めなければいけません。 プールでは様々な細菌がプール水を介して耳鼻や口、眼に侵入しますが、基準どおりの十分な消毒によりプール水を介しての感染は予防することができます。 気を付けたいのが、感染者とのタオルの共用やプールサイドの床を介しての感染です。 また、プールでは汗をかいていることが分かり辛いため、いつの間にか熱中症になっているというケースも多くあります。
感染症
外耳炎
耳掃除のし過ぎなどからできた耳の小さな傷口から細菌感染することで起こり、耳の腫れや、鼻水、頭痛などの症状が出ます。 外耳炎にかかっている場合は、プールに入ってはいけません。水泳前、綿棒などで無理に耳あかを取り除くと耳が傷ついて細菌が侵入しやすくなるため、避けましょう。
看護師
咽頭結膜炎(プール熱)
アデノウィルスへの感染で引き起こされ、3~7日の潜伏期間の後、発熱、のどの腫れと痛み、リンパ節の腫れなど咽頭炎の症状と、結膜炎による目の痛みや充血の症状が出ます。 プールの水を介して感染することがあるので「プール熱」と呼ばれています。 プール水の徹底した塩素管理と、水泳後のうがいと洗眼、タオルを他人と共用しないなどの予防法があります。
流行性角結膜炎(はやり目)
結膜と角膜の炎症で、結膜に充血が出て異物感や眼脂、耳前リンパ節腫脹がみられます。 角膜損傷まで進行すると、失明の可能性もある怖い病気です。 空気感染はしませんが感染力は強く、2~3週間程度は感染力があるので注意が必要です。 原因はアデノウィルスで、プール水よりタオルの共用により感染する可能性が高いとされています。
環境による障害など
目薬
塩素剤による眼の障害
遊泳中やその後に、眼の充血、異物感、角膜の剥がれ、まぶしさを異常に感じるなどの症状が出ることがあります。 症状が現れたらすぐ塩素濃度の低い水道水や目薬で眼を洗います。 原因は、基準を上回る高濃度の塩素消毒のためで、プール水の遊離残留塩素濃度を1.0mg/L以下に保つことやプ-ルの換気が予防になります。
熱中症
熱中症は暑熱に身体が反応できないために起こる、様々な症状の総称です。主に4つの症状に分類されます。
(1)
熱射病
運動などで体内に熱が産み出されますが、熱の放散が追い付かず体温調整機能が破たんして起こります。 屋外の直射日光が原因で起こるものを日射病といいます。42℃~43℃の体温上昇、汗が止まる、血圧低下、意識混濁などの症状が起こり、死亡に至ることもあります。 症状が出たら、涼しいところに上半身を高くして寝かせ、氷などで体を冷やします。 意識障害がある場合は、迷わず救急車を呼んでください。
(2)
熱痙攣
大量に発汗したあと水のみで水分補給をした結果、塩分が不足して血中のナトリウムが不足して起こります。 全身の筋肉が痙攣し、つったような状態になることもあります。 症状が出たら、薬局で生理食塩水を買うか、コップ1杯に大さじ1杯の食塩を溶かした食塩水を準備して飲ませます。
(3)
熱失神
体温が上がると皮膚血管が拡張します。そうなると心臓へ戻る血液量が減少し血圧が低下、脳に送られる血液量も減少して意識消失が起こります。 症状が出たら、涼しいところで下半身を高くして寝かせ、意識がしっかりしたときに低濃度の食塩水を飲ませます。
(4)
熱疲労
高温多湿のなかで多くの汗をかき、水分の補給が足りないときに起こります。 塩分だけではなく水分も不足すると、血液の水分が少ない脱水状態になり、脱力、吐き気、頭痛などを発症します。 室内プールでも、監視員や大会役員で起こることがあるので注意が必要です。 症状がでたら、糖分と塩分を含んだスポーツ飲料などを飲み、それでも回復しない場合は病院の受診が必要になります。
参考文献:「水泳プール総合ハンドブック」